月の内部構造:核からマントル、地殻まで

月は地球の唯一の自然衛星として、私たちにとって最も身近な天体です。表面のクレーターや月の満ち欠けに注目が集まりがちですが、内部構造もまた非常に興味深い研究対象です。地球と同様に、月にも「核」「マントル」「地殻」といった層構造が存在しており、近年の探査ミッションや地震計データにより、その詳細が少しずつ明らかになってきています。本記事では、月の内部構造について、最新の知見をもとにわかりやすく解説します。

月の内部構造の概要

月の内部は、大きく分けて以下の三層から構成されています。これらの層はそれぞれ性質や成分が異なり、月の進化の歴史や内部活動を理解するための重要な手がかりとなります。

  • 核(コア):月の最も内側に位置する中心部で、主に鉄やニッケルを含む金属で構成されています。小さいながらも月の磁場形成や初期の熱履歴に深く関係しています。
  • マントル:核の外側に広がる層で、月の体積の多くを占めています。ケイ酸塩鉱物が主成分で、過去の火山活動や月震の発生源とされる領域です。
  • 地殻(クレーターなどが刻まれた最表層):私たちが月を望遠鏡で観察したときに目にする表面部分です。斜長石を主成分とした軽い岩石でできており、無数のクレーターや「月の海」といった地形的特徴が存在します。

これら三層の構造は、月が誕生したとされる巨大衝突後に冷却しながら分化(分離・層構造化)した過程を反映していると考えられており、それぞれの層に残された物理的・化学的な痕跡を調べることで、月の形成時期や初期の熱史を読み解くことができます。また、これらの層の厚さや性質は場所によっても異なることがあり、それが月面地形の多様性の一因ともなっています。

地殻:月面の特徴を形づくる最外層

月の地殻は主に斜長石を主成分とする軽い岩石で構成されています。地球の地殻に比べると非常に厚く、表面のクレーターや「月の海(マリア)」などの特徴もこの層に属します。

地殻の特徴

  • 厚さ:約30〜40km(地域差あり)
  • 主成分:斜長石、玄武岩、アノーサイト
  • 特徴:隕石衝突の痕跡が多数残る

月の裏側と表側の違い

月の裏側は表側に比べてクレーターが多く、地殻が厚い傾向があります。これは地球からの潮汐力の影響による熱分布の非対称性と考えられています。

マントル:月内部の最大部分

地殻の下に位置するマントルは、月の体積の大部分を占め、過去の火山活動や月震(月の地震)の起源と関係しています。

マントルの構造と性質

  • 深さ:地表から約1000kmまで
  • 主成分:かんらん石、輝石などのケイ酸塩鉱物
  • 特徴:かつて部分溶融して「月の海」の溶岩を供給した

マントルは現在では冷え固まっており、プレート運動のような活発な地殻変動は見られませんが、一部では地震活動が継続していると考えられています。

核:月の中心部にある金属の球体

月にも地球と同様に核が存在しますが、そのサイズや成分は地球とは異なります。

月の核の特徴

項目 内容
半径 約300〜500km(推定)
状態 内核は固体、外核は液体と考えられる
主成分 鉄(Fe)を主体とし、ニッケル(Ni)、硫黄(S)を含む
特徴 小さく、磁場は現在ほとんど存在しない

月の核は非常に小さく、地球のような強い磁場は持っていません。ただし、かつてはより活発な磁気ダイナモが存在していた可能性があり、古代の月の岩石からその証拠が見つかっています。

月震(月の地震)から分かる内部構造

アポロ計画で設置された地震計により、月にも「月震」が存在することが確認されました。月震は以下の4種類に分類されます。

月震の種類

種類 特徴
浅発月震 地表近くで発生し、小規模だが頻度が高い
深発月震 深さ約700〜1200km付近で発生、周期的
隕石衝突による震動 突発的で局所的な揺れを伴う
熱による膨張震動 昼夜の温度差で表面が膨張・収縮して起きる微弱な震動

これらのデータは、月の内部構造を解明する上で非常に貴重な情報源となっています。

月の内部構造に関する最新研究

近年ではNASAの「GRAIL(グレイル)ミッション」や日本の「かぐや」などの探査によって、月内部の重力分布や地殻の厚みの地域差がより高精度で測定されるようになりました。

主な成果

  • 月の地殻厚は裏側が最大で60kmを超える可能性
  • 地殻の下に低密度の領域(かつてマグマがあった痕跡)を確認
  • 核のサイズ推定や密度分布の解析が進行中

今後も地震観測装置の改良や新たな探査によって、より精密なモデルの構築が期待されています。

まとめ

月は単なる石の塊ではなく、核・マントル・地殻という三層構造を持つ複雑な天体です。特に地震観測や探査機による観測の進展によって、内部の様子が徐々に明らかになってきています。
地殻は30〜40km、マントルは約1000km、そして核は約300〜500kmとされ、それぞれが月の誕生と進化の記録を内包しています。今後の探査によって月の内部に関する理解がさらに深まることで、地球や太陽系の成り立ちを知る手がかりにもつながっていくことでしょう。

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